車両保険は過失割合分の修理費を払ってくれるのか?

自動車保険

1.あっ!と思ったときには…

Aさんは、普通乗用自動車を運転中にスマートフォンのゲームアプリを起動して停車中などにそのゲームの操作を行っていました。Aさんは、スマートフォンの電池残量が不足していると考え、車内で充電しようとして充電コードを差し込むことに気を取られてしまいました。そのため、Aさんは前方左右の注視を怠り、進路前方の横断歩道上を自転車で横断中のBさんの発見が遅れ、急ブレーキを踏みましたが間に合いませんでした。AさんはBさんに自車を衝突させてしまい、Bさんを路上に転倒させてしまいBさんは怪我を負ってしまいました。

自働車を運転するにあたって運転者には、前方左右を注視することが基本的な注意義務が課されています。しかし、Aさんはスマートフォンの充電作業に気を取られてしまい、前方左右を注視せず、自動車運転者としての基本的な注意義務に違反してしまった結果、本件交通事故を引き起こしてしまいました。

交通事故を起こしてしまった場合、被害者に対して治療費や慰謝料などの損害は自動車賠償保険や任意保険にて賠償することができます。では、自分の自動車についてはどうなるでしょうか。Aさんのように自らに過失がある場合であっても車両保険によって修理ができるのか。修理できるとしても、どれくらい修理費が支払われるのか。このような不安なお気持ちをお持ちの方は多くいらっしゃるとおもいます。そこで、以下では自らに過失がある場合であっても車両保険によって過失割合の限度での自動車の修理費が支払われることについて詳しく解説します。

2.自動車にはさまざまな保険がある

まず、自動車保険には、大きく分けて自賠責保険任意保険という2種類があります。

自賠責保険は、自動車損害賠償保障法によって全ての自動車(車、バイク)と原動機付自転車を運転する場合に加入が義務付けられている保険です。いわゆる強制保険と呼ばれるものです。この自賠責保険に未加入の場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金と免停(違反点数6点)の罰則が与えられます。

次に、任意保険は、その名の通り、加入をするかしないかが運転者の自由に委ねられている保険です。今日では損害賠償が高額になることも多く、自賠責保険だけでは賠償額を補えないことがあるため、この任意保険に加入し充実した保障が準備することが当然という状況になっています。

3.車両保険とは?

では次に、車両保険とは何かについてご説明します。

自賠責保険や任意保険というのは、事故が起きた場合に被害者に対して損害を賠償するときなどに活躍する保険です。これに対して、車両保険とは、契約している車が衝突や接触などによって損害を受けた場合に、その修理費用などを補償してくれる保険であって、自分車の損害を補償してもらえる自分の車に対する保険です。

対象になる事故例としては、車と車が衝突、接触をして契約車両が傷ついた場合や、火災により契約車両に損害があった場合、外部から物が飛んできて契約車両に傷がついた場合、車庫入れに失敗してこすってしまった場合などがあります。 

4.車両保険の加入率は低い!?

車両保険への加入率は、他の自動車保険に比べて低いです。対人賠償保険が74.1%、対物賠償保険が74.2%である対して、車両保険は43.5%と過半数にとどいていません。しかし、もし車両保険に加入していなければ、交通事故で生じた損害、すなわち自分の自動車の修理費費用の一部あるいは全部を自己負担しなければなりません。

以下では、車両保険のデメリットとメリットを比較してみたいと思います。

5.車両保険のメリット・デメリット

(1)車両保険のデメリット

デメリットをあげるとするならば、保険料を毎月支払わなければならないことがあります。しかし、この保険料を支払ったとしても以下のとおり、車両保険には多くのメリットがあります。

(2)車両保険のメリット

高級車や新車を購入された方には多くのメリットがあります。例えば、高級車の場合には修理費用が高額になることがある修理費を車両保険で賄うためにも加入しておくことがおすすめです。新車が全損してしまったならば、ローンだけが残ってしまいまずが、車両保険でローン返済に充てることもできます。

また、車の市場価値が高い場合や、修理をする金銭的余裕がない場合にも車両保険が大いに役立ちます。この他にも車両保険には多くのメリットがあります。そのため、保険料を支払ったとしても将来の予期せぬ事故に備えるという意味で車両保険に加入することをおすすめします。

 6.車両保険で支払われる保険金の種類

車両保険で支払われる保険金は、損害保険金及び費用です。

損害保険金は、全損と分損に場合によって異なってきます。全損とは、被保険自動車の損害の状態が保険価額を修理費が超える場合、または被保険自動車を修理できない場合被保険自動車が盗難され発見されなかった場合をいいます。これに対して、分損とは被保険自動車の損害の状態が全損以外の場合をいいます。

全損の場合における損害保険金の額は、保険金額(被保険自動車と同一の用途・車種・車名・型式・仕様・初度登録年月の自動車の市場販売価格相当額(時価))あるいは保険価額のいずれか低額の方になります。

次に分損の場合における損害保険金の額は、保険価額が保険金額を下回る場合であれば、損害額から保険証券記載の免責金額を差し引いた額が損害保険金の額になります。保険価額が保険金額以上の場合には、損害額から保険証券記載の免責金額を差し引いた額に、(保険金額/保険価額)を掛け合わせた額が損害保険金の額になります。

7.車両保険の支払いは過失割合で決まる

では次に、車両保険による支払いについて解説します。

初めにご紹介した事例でAさんの車の修理代は100万円で過失割合が80%と認定されました。この場合、自動車保険を使うのであればAさんは自己の車両保険で自車の修理費80万円支払うことになります。そして残りの20万円はBさんの過失なのでBさんの保険から支払うことになります。しかし、Aさんが車両保険に加入していないならばAさんは80万円を自腹で支払うことになります。また、Bさんから20万円の損害賠償を受けたとしても実際の損害額である100万円の修理費に満たないことになります。

交通事故に遭い車が損害を受けた場合に自分に過失があったとしても車両保険に加入していれば、修理費用を支払ってくれるため、相手方からの補償では自分の車の損害が十分に補償されないときに役に立つのが車両保険です。車両保険の保険金は自分の過失分に対しても支払われるため、過失相殺による減額分をカバーすることができます。

8.車両保険の請求の流れ

(1)警察に連絡をする

交通事故の場合は当然に警察に届け出をしますが、車両保険の請求をする場合には車以外に衝突した場合にも警察に届け出をしなければなりません。

(2)修理工場での修理を依頼する

修理工場へ見積もりを出してもらい、修理をしてもらいます。

(3)保険会社へ連絡をする

保険会社には、見積もりを提出します。

(4)保険会社からの支払い

その後、修理が完了したら保険会社から修理工場へ直接修理費用が支払われます。

車両保険では、以下の2点に注意しなければなりません。

保険を使用する、しないに関わらず事故が発生したら契約車は保険会社に通知をする義務があるので必ず保険会社へ連絡をしてください。

時間が経つと事故の事実関係を明確に伝えることができず、修理代金などの調査が困難になることから不要なトラブルを避けるためにも通知だけは速やかに行いましょう。

次に、保険金の請求には期限があります。車両保険の請求期限は、事故発生日の翌日から3年間です。請求期限間際で請求すると、実際の損害額よりも少ない金額しか補償されないというケースもあるので注意しましょう。また、請求期限を過ぎてしまうと一切保険金を請求することができません。手続きにも時間がかかるので、請求は余裕をもって行いましょう。

まとめに

以上のとおり、車両保険に加入していないと、自動車の修理費を自己負担しなくてはならないことになります。そのため、過失割合の有無にかかわらず、修理費等が支払われる車両保険に加入することをおすすめします。過失割合の認定については専門性を有するものですので不満のある方は、弁護士に一度ご相談下さい。